窒化ガリウム


 ノーベル物理学受賞の江崎玲於奈さんは、青色LEDで世界の大企業を出し抜いた中村修二さん(現在カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授、著書に『考える力、やり抜く力 私の方法』がある)評して、「マーベリック(焼印のない家畜のこと。つまり、学界の派閥や常識にとらわれない一匹狼)な研究者だ」と言う。
 筑波大学物理工学の秩父重英さんも、「日本の研究者は、知識量は豊富だが頭でっかちになってしまって独自の発想を持てなくなっている人が多い。その点、中村さんは全く常識にとらわれない。だからこそ独自の研究課題を独自のやり方で克服できたのではないか」と。
中村さんは既存の論文には左右されず、自分で納得できるまで何回も何回も実験を繰り返し追及する。大手企業が捨てた窒化ガリウム(もしかしたら高い性能を出せるかもしれないが、欠陥の少ない結晶膜をつくるのが難しいとされていた)を材料に選び、半導体製造装置まで自分でつくった。
 いまや知識偏重になってしまった大手企業の研究者にとって、青色LEDの材料として窒化ガリウムを選ぶことなど常識の埒外だったのだ。ましてや自分で半導体製造装置をつくるなどエリート研究者は考えもしなかった。



誰がやっても儲かる商売


 木野親之(元松下電送社長)さんが松下幸之助さんに、「一円玉が道に落ちていても誰も見向きもしないが、仮に五分五厘の利息で百年定期みしたとすると211円になる。この利息を三割にすると、なんと2479億円になる。一円を無視したらゼロだが、ふつうに活用すれば211円、うまく活用すれば2479億円になる」という話を従業員にしていると話すと「ええ話やな」と相槌を打った後、次のように続けられたという。
「しかし、きみ、それだけでは足らんで。一円を無視してもゼロになるだけやが、人間を無視したら怨念が残って、マイナス無限大になる。人間を大切にして、光を当てて、すべての人に感謝すれば、無限大の宝に変わるんやで」
感謝ということを大切にした松下さんは、また、こうも言っている。
「事業は誰がやってももうかるようにできてるんや。それが赤字やというのは感謝の心が足りないからや。100円のものに利益を載せて110円で売るようでは、感謝するという気持ちが一つもない。110円の価値のあるものを90円で作り100円で売る。そうすれば買ってくださったお客さまにも10円儲かったと喜んでもらえる。我々も10円もうかる。これさえ分かればどんな事業でももうかる」



つぶしが利く人三原則

 NTTからDDI副社長に、そして慶應大学教授に転身した千本倖生さんは、企業家を指向する人に対して次の三点を問いかける。
@今までの仕事を振り返って、心から仕事に取り組んできたと自信を持って言えるか。
一生懸命にやる中で、「これは本当に必要なのか」「これをやることが誰かのため、社会のために役立つのか」と言った疑問を常に発し続けて仕事をしてきたかどうかだ。なんの疑問もなしに、ルーチンワークで仕事を流してきただけの人には自立はできない。
A身を軽くすることができるか。
学歴や経験、地位、体裁などに縛られていると、せっかくのチャンスがやってきても気軽に転身することができなくなってしまう。
B自分の武器は何か。
技術でもセールスの腕でも何でもいいから、個としてこれだけは絶対に誰にも負けないといえるものを持っているかどうかである。自分の武器がなくては自立は難しい。

これからの時代には、会社に留まろうと独立しようと大切な要件である。